一年近くに渡って行われた「高尾事件(ケース)」の最終報告。「山本」の正体とは、そして、恐怖の「マイナスエネルギーの墓場」はそこに実在したのか?!
〜ラジャ本人が語る・いまだから話せる
「心霊怪奇」秘話〜「ラジャ・ハルマームの心霊怪奇レポート」が撮られた昭和末期、世はまさに心霊と怪奇の一大ブームが巻き起こっていた。
このころ登場した稲川淳二の「こわい話」は、実際の体験(?)にもとずく本人の語りだけ、それまでの再現フィルム物とは一線を画し「じつはですね・・」的、うちあけ話風ひとり語りの圧倒的なリアリティと迫力は、怪談本来の凄みを世間に再認識させるものであった。宣保愛子の霊視や、怪しげな坊主による除霊の実演などが連日TVを賑わし、怪奇スポットなる言葉もこのころ登場。(池田貴族は当時まだイカ天バンドにもなっていなかった。)ぼこぼこ生まれた街の「こわい噂」は、学校や職場を猛スピードで駆け抜けた。我々もこの手の話題には目が無く、挨拶ついでに「なんか、こわい話ないですか?」と、初対面の人には必ず聞いたものだ。
・・・しかし・・・この手の話って、あまり首つっこむとヤバかったりするのですね。いや、マジで。
諸君は「人面犬」を御記憶であろうか?人面魚だの、人面岩だの、しょーもない便乗品まで生み出し、一時、天下を席巻したあの非常〜にこわい噂である。
あの話、事実、非常にあぶない。いや、あぶなかったらしい。
1985年頃、アラマントに人間の顔をした奇妙な犬の映画の企画が上がっていた。犬の映画なんて、アラマントらしからぬなと思い、わたし(ラジャ)あまりは乗り気でなかったが、物語ではなくドキュメント映画だと聞いて少々面喰らった。
「世の中って面白いねえ。見えない所でなにが起こっているのか分からない。こういう事って、本当にあるんだねえ。驚いちゃったねえ。実際に見たってんだからねえ。ふご。」電話口で興奮して語るアラマント氏。ここで注意してもらいたいのは、彼が話しているのは「人の顔をした奇妙な犬」の事で、「人面犬の噂話」の事ではない。この時点で人面犬のうわさは世間にはまだ存在していない。つまり、アラマント氏は実際にそれを見た人間から、「実はですね・・・えらいもん見ちゃったんスよ」的体験談として聞いたのだ。これはいける。霊でもUFOでもない、得体の知れない不気味なやつが街をうろついてるなんて、いい。しかも人面犬なんて、そのばかばかしさ加減がまた実にいい。
「・・・でだね、これからこう言うのもアラマントのラインナップに加えていこうというわけだ。実録怪奇ものだ。本人インタビューと現地調査、再現フィルムで手堅く構成した「木スペ」のUFO 特集っぽいのを考えとる。再現シーンで特撮の腕も振るえるしな。情報源は厳選する。伝聞の伝聞以上は不採用。直接、体験者本人からの取材を原則とする。どう?」
「いいね。」
「あと、解説みたいな事するキャラも出そうと考えている。」
「・・・山田隆とか田鶴浜弘みたいな?」
「ちがう。もっとホスト的というかシリーズの統一コメンテーターみたいなかんじ。」
「あ、矢追純一みたいな?」
「そう、新倉イワオみたいな。」
「い、いいね、いいねえ!」
こうしてトントン拍子に話は進み、構成や取材日程などが具体的に煮詰まってきた。あわよくば実物をビデオに収められるかもしれぬ。なにせネタ元が確かだから、何かしら収穫はあるはずだ。犬の顔は中曽根元総理に似ていたという。するとスダレ頭か?悪ノリして捕獲作戦の計画まであがった。
しかしそこでストップだった。「現場の寺と病院へロケハンに行く。」というアラマント氏からの電話を最後に、「恐怖ドキュマント・アラマンタリー・都会の闇に潜む!謎の人面犬を追え!!(仮題)」の製作は中断してしまう。
「なんか、よくわかんないんだけど、急に(最初の情報提供者が)、降りたいとか言い出して。全く突然でしたね。
それも、一切この件から手を引きたいと。それまで、みんなとああだこうだ言ってたんですよ。ロケの時の足はどうするとか。昼はどこで食うとか。本人が一番、張り切ってたのが、急にですよ。驚いたっちゅうか、正直あきれましたよ。ところが、理由を聞いても、なんか歯切れ悪くて。土壇場になってデタラメ言ってたのがばれるってんでビビッたんじゃねえの、みたいなこと、言う人いましたけど、どうも、そんな感じじゃない。」
「腑に落ちなかったけど、もう動きだしちゃってたから、じゃあこっちで勝手に進めますって、アラマントさん、ムッとしてましたね。また構成、やり直しですから。ところが彼、いつまでもウロウロしてるんです。自分から手を切るって言ったくせに、何かまだ用あんのかなと思ってたら、実は犬の話の事だけど、あれシャレにならないからやめたほうがいい、なんて言いだすわけ。」
「それが、けっこうマジなわけ。何があったのか知らないけど、もともとそんな不誠実な人柄でもないし、急に態度変えた理由って、やっぱ何かあるわけじゃないですか。で、真剣。みんな、口には出さないけどイヤな予感は感じてましたね。彼の、シャレんなんないからやめたほうがいい、が、やめて欲しい、になって、やめないとどうなるか分からない、になった時点で気持ち悪くなってやめた。」(当時のスタッフの証言をまとめたもの)。
わたし(ラジャ)はこの件に関して直接タッチしていないが、言わせていただければ、まあ、情けないの一言に尽きる。「人面犬」が、口裂け女以来の爆発的ヒットで社会現象になり、都市伝説ブームの火付け役となるのは、アラマント社の製作中断からまだ数年あとの話である。実際に被害を受けたわけでもなく、ただスタッフの世迷い言でこんなおいしい企画が封印されてしまったのは、まこと残念としか言いようが無い。
が、である。話はこれだけではない。実力行使を受け、放棄せざるを得なかった企画も、実はアラマントには存在する。もちろん、霊のである。
これもわたしはノータッチなので詳しくは語れないが、何でも、浦安の埋め立て地にある怪奇スポットとそれにまつわる怖ろしい噂を取材中、(と言っても家に帰ってからだが)なんとアラマント氏本人が、霊のアタックを受けて大変な目に遭ったというのだ。
「霊体験はあれが初めてでした。・・・出ましたね。現場から帰って、部屋でウトウトしてた時でしたか。具体的な状況は、ここで話しても面白くないので省きますが、霊体験はそれが初めてでした。でも最初のあれは警告みたいなもんだったのでしょう。霊体験はそれが初めてでした。」
三度も言って強調するくらいだから、その時氏の霊体験は恐怖より感動が先だったのだろう。だが、やがてそんな余裕も吹っ飛ぶ、血も凍るような決定的な事態に見舞われる事になる。
「それ以来、いつも霊の気配を感じるようになりました。ある日、仕事から戻って自宅のドアを開けようとした瞬間、ヤバイって、感じた事があったんです。
ああ、こりゃいるな、今ドア開けちゃ絶対いかんなと、本能的に分かったんです。今まで感じた事のないようなものすごい霊気というか、殺気のかたまりが、ドア一枚むこうに、確実にいるのがわかるんです。情けない話ですが、もう、ワーッて感じで、いちもくさんにその場を逃げちゃった。逃げながらホント、後悔しましたね。おれはなんて馬鹿な事をしたんだと。霊なんて、もう一生かかわらんぞと。
で、しばらくして戻ると、やっぱりまだ気配がするわけですよ。これじゃ部屋に入れない。かといって、いつまでもこのままってわけにもいかんし、取りあえず裏へまわって中の様子を見てみる事にしたんです。当時はワンルームに住んでたので、裏のガラス戸から玄関まで丸見えなんです。もう、心臓バクバクで、倒れるくらい怖かったけど、意を決してソーッとのぞいてみました。
すると・・・・いるんですよ。霊が。しかもドアのとこにピターって張り付いて、私が入って来るのを今か今かと待ちかまえてる。思わず声を上げそうになりましたね。たけど、必死でこらえました。確実に殺されると思いましたから。
でも、霊は私に気付いてないみたいでした。私がドアを開けて入って来る瞬間に全神経を集中していたのでしょう。だから野郎が妙に神妙な顔しちゃって、「まだかな・・」とか「なにやってんだ?」とかブツブツ言いながらも、しかもちょっとドキドキしつつ、じっと息をひそめて待ちかまえてる様子までうしろから丸見えなわけですよ。そんな無防備な霊の様子を見ているうちに、ムカッときましたね。こいつらって、こんな事ばっかやってんの、年中、何が楽しいんだ、ふざけるな、ってんで思わずガラッて戸を開けて、
『こらーっ!!』、怒鳴りました。」(1987年頃、アラマント氏本人の談。ただし、氏の記憶が曖昧なため、若干の補正・創作を加えてある。)
そしてこの企画はただちに放棄された。こういった話、実際にあるのである。
ラジャ・ハルマームが登場して10年、当時の最先端トレンドだった怪奇やオカルトを徹底追跡した「ラジャ・ハルマームの心霊怪奇シリーズ」であったが、あらためて今見直すとさすがに時代を感じさせる部分も多々目につく。例えば麻原彰晃。当時はただの変なオッサン、位だとしか思っていなかったので、そのおちょくりが本編で頻繁に出てくる。何をかくそう、ラジャのキャラクターそのものが実は麻原のパクリだっつうから、今じゃシャレになりまっしえん。その後の事は世界のだれも予想できなかったとはいえ、ラジャシリーズの一般公開ではそれが一番問題になる点だ。
さて、最後にわたし(ラジャ)じしんが、心霊現象についてどう思っているか意見を言わねばなるまい。
・・・・・・・・・・ズバリ、信じません。
絶対いない。
うむ。ちょっと考えれば分かりましょうが。あるわきゃない。たとえ見たとしてもね。
だがそれを言ってはおしまいだ。
恐怖や怪奇は想像力の源。無限に広がる空想の母。夜中、ふと目覚めるといきなり鎧武者の因縁霊に布団の上に乗っかられ、おまけに首吊り自殺の地縛霊に首を絞められつつ、同時にもんぺをはいた水死者の幽霊に足を引っ張られたりする事って、そりゃ怖えけど、考えようによってはすごくファンタスチックでワクワクしないかね。現実の世界には竜も魔法使いもいないわけだし、空の彼方に点のように現れ、カメラを探してる間にいなくなっちゃうUFOなんかより霊体験とか霊現象ってのはずっとリアルで、そして誰もが体験しうる、一番身近なファンタジーなんだしね。
だから、「こわい話」はやめられないのだな。
(ここまで読んでくれた人に特報!!ラジャはコスチュームと設定を一新、スーパー・ハルマーム、あるいはハルマーム・キングとして近々復活する予定。乞うご期待!)
*ラジャ氏直筆のサイン*