「火男VSオカメ仮面」

(1981) 

地球は危機に瀕していた。

謎の怪人、オカメ仮面が巨大おかめ宇宙船を地球の衛星軌道上に配置、いきなり原子核破砕ジャイアント7万5千ミリ砲の発射の秒読みを開始したのだ。

 理由もわからず討伐に向かった地球防衛軍の宇宙戦艦日向も猛悪無比なるオカメ仮面の必殺技の前に敢えなく轟沈。もはや全人類の運命も風前の灯火と見えた。

 その時、突然火男の追跡が始まった!!ローラースケートにはじまり、スバル360、D−51機関車、自転車、そしてランボルギーニ・イオタを乗り継ぎ、逃げるオカメ仮面を追う火男。

 そしてデス・スター攻防戦も真っ青の大迫力のチェイス・アンド・バトルの果て、ついに火男はオカメ仮面を捕らえ、はるか銀河の彼方へと追放したのだった。

 英雄として迎えられた火男は日本政府と人民から感謝のしるしとして新宿の京王プラザビルを進呈される。

 だが物語はまだ終わっていなかった。主を失ったとはいえ、オカメ宇宙船はまだ軌道上にあり、ジャイアント砲の秒読みも依然続いていた。問題は全く解決していなかったのだ。

 そんなことはすっかり忘れ、平和な眠りを貪る地球人類。

 火男も京王プラザ最上階の一室で、ひとりワインを傾けしつこく勝利の余韻を噛みしめていた。

 時がたち、然るべくしてジャイアント砲が火を吐き、巨大な砲弾が地球へ落下、火男の京王プラザに直撃する。しかし、被害は火男の居室を全焼したに止まった。

 

 ジャイアント砲とは、とんだ見かけ倒しだったようだ。

 一方、猛火に包まれた部屋の中、断末魔の火男の脳裏にはさまざまな思いが走馬燈のようによぎる。

 なつかしい景色。遠い夏の記憶、緑の田園、川、橋。あざ笑うおかめのお面。そして、横断歩道を渡るリヤカーの焼き芋屋。それは、幼き日の夢の姿か。

 瞬間、紅蓮の炎が火男の涙で滲んだ。

   

 ・・・こうして火男は、もとの「火」へと帰っていったんじゃと。

 どっぺんぱらりのぷう。

 無茶を承知でこの映画のストーリーを文章化するとこうなる。理解していただけたであろうか。

 さて、わずかな試行錯誤の期間をへて、作品としての体裁をもった最初の映画、「怪人火男あらわる」を完成させたアラマント氏は8ミリを本格的に趣味のレパートリーに加え、以降続々と作品を撮り続ける事になる。

 「怪人火男あらわる」の続編にあたる「怪人火男対 O(オー)・カメ仮面」は、1本の作品にフィルムカートリッジを丸々2本分つぎこんだという、当時としては画期的超大作だ。

 しかし相変わらず過剰なイマジネーションの暴走と、理解を超えた短絡と飛躍とサービスがてんこもり状態。「タワーリング・インフェルノ」のTV放映を見て、「やってみたくなった」という京王プラザビル炎上のシーンは、実際に自宅のベランダに京王プラザのセットを組んで撮影したという。よく火事にならずにすんだものだ。

 作品をシリーズ化するということはコンスタントに作り続ける上で重要な要素のひとつであるが、「火男」のキャラは実際、インスタントに誕生したらしい。

 撮影に使われた火男のお面は、紙の張り子細工で作られた本格的な物で、おかめの面と一対で実家の応接間にインテリアとして大切に飾られていたところを無断で借用したものらしい。もともと美術品として作られ、実用には耐えぬ装飾用であったこの紙のお面は、過酷な撮影現場で風雨に曝され、花火やパンチを浴びせられ、さんざん酷使されたあげく、ある日、こつ然と大破。一説によるとガラスのように粉々に砕け散っていたという。その後火男シリーズは潰えてしまうのである。

 さらに次の「スクランブル」に登場後、アラマント作品で頻繁に現れる銀色のゴム製宇宙人マスクに至っては、友達がそのマスクを持って遊びに来た折り、忘れていったものをそのまま安易に使用し続け、しかも現在に至るまで持ち主に返却されていないというから、全くひどい話である。

 余談だが この映画の冒頭に、疾走する電気機関車が、仰臥姿勢の巨大なオカメ仮面の全開に開ききった股間に突撃し果てるという、あまりにもダイレクトな問題シーンがある。「撮っている時は全然気にしていなかった」と証言するアラマント氏だが、全編ハイテンションで暴走するこの映画の、隠された無意識のテーマを分析してみるのもまた面白いだろう。